こんにちは。機械技術部の今井です。
昨年10月の刃物祭では、たいへん多くのお客様にご来訪いただき、ありがとうございました。
弊社としても実に4年ぶりの現地出店で、何より直接お客様にお会いできる貴重な機会ということで、スタッフ一同気合を入れて臨みました。
各会場ともに過去最大級の盛況となり、本当に充実した2日間となりました。
当日は沢山の商品を用意しておりましたが、その中でも昨年リリースした「Campn’Twin」シリーズは想像をはるかに超える売れ行きで、初日の昼頃にはチョッパーの持ち込み分が完売し、スタッフが慌てて補充に走るほどでした。
さて、ここであらためて「Campn’ Twin」について、特にチョッパーに主眼を置いてお話したいと思います。
このシリーズは「頑丈に、かつ繊細に」を合言葉に開発したもので、極厚の刃元と薄い切っ先が共通の特徴です。
チョッパーでは4mm厚の鋼材を使用しており、この特徴がスライサーより顕著になっています。
加えて刀の鍔を模した口金と、丸みをもたせた細長い一文字ハンドルが目を引きます。
外形そのものは既存の「サビナイフ5ワイルドハンター」と共通ですが、材質はより切れ味の持続性に優れるVG-10鋼を採用しております。
それぞれのポイントを詳しく見ていくと…。
薄い切っ先は、主に食材の切り分けやブッシュクラフトでの細かな作業を想定しております。対して厚い刃元は、ほとんど鈍(なまくら)のようなもので、薪や骨を割る、叩き切るようなハードな仕事を任せられます。お好みでコンベックス風に研磨されても良いかもしれません。
口金は手を保護する役割がありますが、通常のナイフと違って全周をカバーしており、より安全性が高くなっています。
細長い一文字ハンドルはしっかりと握り込みやく、用途によって持つ場所を変えることでモーメントを調整し、より軽い力で作業を進めることができます。
長くなってしまいましたが、以上のような特徴がタイトルにある魚の調理とどう結びつくのか、これからお話したいと思います。
まず初めに、魚をさばく時、真っ先に浮かぶのは片刃の和包丁でしょう。
独創的な形状と使い勝手の良さから、多くの家庭やエキスパート達に支持されていることは言うまでもありません。
しかし片刃であるため表と裏で刃の形状が大きく異なり、常に誰にでも扱いやすいものであるとは言い切れません。
利き手が存在し、左用の和包丁は一般的に右用に比べて1.3~2倍ほど高額になってしまうことも、左利きの私にとって考慮すべき点です。
そういうわけで、私は「魚を調理する際に片刃の和包丁を使用する」ということに対してこだわりはなく、純粋に自分の必要とする形状のナイフが欲しくなったわけです。
では実際にチョッパーを使用して、魚をさばいてみましょう。
本当は自分で釣りたかったところですが、久しぶりのサーフで巨エイに切られるはボラの大群に当たるはで散々だったため、ナイスなタイミングで手に入った50cmクラスの鯛を使いたいと思います。
この時は切っ先から2~3cm部分を使用します。
薄刃のパートは切れ味を常に保っていただくと、ストレスなく作業できます。
カマの骨は硬いですが、えらぶたに気を付けて裁っていきましょう。
では次。
背中側に刃を入れ、皮を切っていきます。
海外のフィレナイフのように、刃のカーブした部分が点で当たるため、ここは非常に良いポイントです。
そのまま背骨に到達するまで切り進めていきますが、普通の包丁や片刃包丁は刃が直線的なので小回りが利きづらく、不必要な部分や既にさばいた身をえぐってしまうことがあります(あるある)。
チョッパーはエッジラインが大きくカーブしており、薄い刃先を使用している時には刃元が逃げるため、こういったえぐり事故を避けることができます。
この後にアバラ骨を断っていきますが、この時も鈍角な刃元は、背骨の稜線を避けつつもナイフの上にかぶさった身を巻き込む心配が少なく、キレイな3枚卸に仕上げられます。
また、大きな口金があることで、鋭い背ビレから指が保護され、安全に思い切った取り回しが可能です。
養殖真鯛のアバラ骨は、頭に近い部分は深くアーチ状に入っており、尾に近づくほど真っすぐになっていきます。
そのため包丁の動かし方が非常に難しく、せっかくのハラミをあきらめて大きくカットしてしまうことはないでしょうか?はい、あると思います。
チョッパーの先端形状はこのすき取り作業がとてもしやすく、容易に骨と腹膜を除去しきることができます。
ここでは分厚い刃元を使用します。鯛の口の骨は中央で分かれているため、そこを狙って初めに軽く刃を入れます。
そうしたら切っ先をまな板に立て、刃元をグッと下ろします。
さすがに背骨を縦に割くことは難しいですが、表裏対称なブレードは真っすぐに下りてゆき、ほぼ均等なかぶと割りの完成です。
こんな具合に、チョッパーで鯛をさばき終えました。
皮引きはスライサーやペティナイフ、サシミ包丁にお任せするのが良いですが、それ以外はチョッパー1本で快適にこなせました。
私自身、このくらい大きな魚を扱うことはたまにしかありません。
なかなか上達しないところもありますし、少ない機会だからこそ失敗したくないものです。
上記の点でも代わりに何かを失っているでしょうし、本当の万能性などは求めるほどに遠ざかってしまうのかもしれません。
それでも頭の中に生まれたものをひとつにまとめ、形となったものを、ちゃんとお客様の手に取っていただけたということが、やはり嬉しく感じます。
今年の1月から通ってようやく1本という寂しい結果でしたが、海の釣り納めとしては上々です。
こちらはスライサーを使って卸してみました。
出世魚としての「ブリ」になると力不足ですが、このくらいの大きさならスライサーで対応できます。
3枚卸しだけでなく、かぶと割りまで1本でこなせました。
背骨が2センチほど頭の方に残っていましたが、画像の通り縦に両断できています。
2つの使い分けは、トラウトやサワラのように骨や身が軟らかい魚はスライサー、鋭い背ビレと体高のある鯛や中型のハタ、シーバスなどにはチョッパーが良いでしょう。
キレイにさばくことができた達成感は、その後に料理をするモチベーションにもつながります。
ぜひ手に取っていただき、ナイフ各部の役割を確認しながら使ってみてください!
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